聴きたい音楽に辿り着くための効率的な方法

興味があるのちょっと書く。ちなみに全然専門じゃない話題。

でも、リスナー側の視点に立つと、話は少し厄介になる。そうしてフラット化した場所から「聴きたい音楽」「(自分にとって)いい音楽」をどうやって探し出すか。
浸水ノート / 柴那典 終わりの始まりのあとに(2)

ミュージシャンとリスナーの関係がフラットになった環境で、リスナー側から「聴きたい音楽」にたどり着くための手段として、有望なのは Pandora じゃないかなあと思いながら。(現在、 Pandora は日本国内から利用できませんけども)


そもそも、音楽を「検索」しよう、って思ったことってある人ってどのくらいいるでしょう。たぶん、世の中の多くの人(といっても音楽好きに限定されますが)は、いい音楽に出会いたい!とは思っても、具体的なイメージにマッチする音楽を検索したい!と思うことは少ないと思います。(何かを作るための要素として探すなら別です)

あの Google でさえ 21 世紀の今も、 “テキスト化された情報” しか検索することができません。

現在、音楽を検索できるように(インデックス化)するには、それぞれの楽曲に対して、タイトル、アーティスト名、レーベル、ジャンル、 BPM といった情報(メタデータ)をつける必要があります。一歩進んだところでは、 Pandora の基となった Music Genome Project のように、音楽の専門家によって楽曲のルーツやボーカルのタイプ、使われている楽器などの「音楽を構成する要素」に関する情報を付加したり、あるいは、自動で検出しようといった研究もあります。こうした情報をデータベースに蓄積して、はじめて検索ができるようになります。

さて、リスナーはこのデータベースを前に、どうやって「自分の好みの音楽」を検索すればいいでしょうか。普段、 Google で何かを検索するときは、検索条件としてキーワードを入力します。でも、今検索したいのは音楽。リスナーは、自分の頭の中にある好みの音をなんとかして「キーワード」に変える必要があります。でも、音楽の教養がない人は、楽器も分からなければコード進行だって分からない。なんとなく音楽の好みがあっても、何が好き!と具体的には表現できません。だって、自分の頭の中にある音を表現する、それって極端な話、作曲するってことです。だから、そもそも音楽を「検索」する、といった考えには結びつかないんじゃないかと、私個人は思います。

さらに、テキストと違って音楽は時間軸のあるメディアです。音楽を目で見て理解することはほぼ不可能です。目視できない以上、どうしても Google の検索結果のように「一覧」することが難しく、結果を得るためには時間を割いて数を聴いていくしかありません。結局、アタックを繰り返して、運命(?)の出会いを探していくことになります。もちろん、音楽好きであればその行為自体が楽しくて、思わぬ出会いがあるから面白いんだよ、といったポジティブな意見も期待できますが、検索によって候補を絞っても、期待した結果を得るのに時間が掛かってしまうのは避けようがありません。

で、聴きたい音楽にどうやってたどり着けばいいんだ、という話に戻ると、結局のところ検索して「結果」を求めるより、効率的な「出会い」を支援する仕組みを作るというのが現実的な解になります。そこで現在よく用いられているのは、このアーティストが好きなならこんなアーティストもどう?といった、ご存じ Amazon 方式のレコメンデーションです。利用者の購入履歴や試聴履歴を基にして傾向を算出しています。でも、誰も聴かない楽曲は永久に推薦されることはありません。また、みんな好きなジャンルが固まってるなら良いんですが、僕のような雑食な人が多いと、成立しないか精度が低いかのどちらかになります。(逆に、ポピュラーミュージック好きな普通の人がメインとなる対象であれば、主に売上面で非常に効果的に働きます。ランキング系も然り。)

そこで最初に述べた Pandora 方式が出てきます。 Pandora は、自分の好きなアーティストや楽曲名を入力すれば、その楽曲を構成している要素を「キーワード」にして、次々と同じテイストを持つ楽曲をストリーミングで流してくれます。いわば、自分の好きな楽曲をキーにして、似た傾向の楽曲との「出会い」を提供する仕組みです。実際これは、かなりの割合でツボを突いた選曲を続けてくれます。事前に専門家が 1 つ 1 つの楽曲を手作業でデータベース化するという、なんとも地味な作業を伴うことになりますが、これが「自分の好みの音楽にたどり着く」という目的を達成するために、一番直感的かつ理想の結果が得られる「現実的な解」なんじゃないかと思います。

もちろん、別にいきなり中身を見せて判断させるだけが方法ではないとは思います。だって、ニコニコ動画で動画探す時もタイトルとサムネイルだけで判断してるわけじゃないし、ネット上で飯屋を探す時だって料理の味じゃなくて料理の写真や店舗情報から探しているわけです。コメントやレビューも重要な判断要素でしょう。でも、データ化して簡単に配信できるものには、これまでのメディアと異なるアプローチの仕方があるんじゃないかなと思ったりもします。今回は、その 1 つとして Pandora を挙げてみました。

まあでも正直、こういう 1 人の音楽好きを満足させる何かよりも、コミュニティを活性化させる方向で動いた方がよっぽど盛り上がるとは思います。音楽に限った話じゃないですけども。両方いい方向に働くのがいいなぁ。


投稿者:

tnj

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「聴きたい音楽に辿り着くための効率的な方法」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 浸水ノート / 柴那典

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