概要: DroidKaigi 2016の基調講演の機材準備、進行、オープニングビデオ、入場中BGMを担当して大変だったけど得るものは多かった
お久しぶりです tnj です。
昨年に引き続き 2016/02/18 と 19 に東京工業大学であった DroidKaigi 2016 で基調講演をまるっと担当してました。全体感は OECさんのblog とか Togetterまとめ とかで見てもらうとして、 Android 開発者コミュニティによる Android エンジニア向けの参加者 600 人規模の結構大がかりなカンファレンスでした。
てなわけで長めですが、以下自分のやってたことの振り返りを忘れないうちに書いときます。
突然のissueアサイン
「基調講演のリハーサル」
DroidKaigi スタッフミーティングも何度目かの2015年のクリスマスイブ、その Issue は突然自分のもとにやってきた。しかし完全に気づかず、状況把握したのが年明け 1/19 ……あと 1 ヶ月じゃん!と最初から不安しかないスタート。
リハーサルという名前に反して、そもそもプログラムがまだなかったのでそこから始めることに。遅れを巻き返すべく1人ブレストして、ざっくりした流れ、必要そうな人とモノ、起きうる問題、その他チェックリストを作り、会場確認の日程調整をして大学側担当者の方に予約を依頼。
この時点で役に立ったのは、941さんのYAPC::Asia Toyko 2010 をやってきた! (準備編)と当日編の記事。なにしろ会場について知見がない(最後に東工大に行ったのは2001年のSuperCon本戦の時)ので、会場となる70周年記念講堂がどんな会場かもわからず。この記事の写真のおかげでだいぶイメージがついた感じ。
会場下見
1/29 に、何人かのスタッフで会場となる東京工業大学 70周年記念講堂を下見。写真とビデオを撮りまくりつつ機材を確認。必要なモノは大体一通り揃っていて、会場機材だけでも大丈夫そう。足りないものや分からないことも事務の方へ質問して大体クリアになった。いけるのでは?という気持ちになる。(こう思うときはだいたいいけない)
司会不在どうしよう問題
基調講演の進行計画で、当初は司会をプロの方にお願いできるつてがあるという話があったこともあり、最初から最後まで司会がいる前提の流れを考えていた。しかし、諸般の事情からそれが難しいということになった。
代わりを立てることもできたけど、今回基調講演のプログラムとしてやる内容は3つしかないシンプルなものだったので、司会なしで最初の挨拶をする代表の @mhidaka 氏に繋いでもらう形を考えた。 Google I/O の基調講演のイメージ。
そういえば DroidKaigi は I/O の基調講演にいろんな部分で影響を受けていて、 2015 の時は「基調講演が始まる前に会場内で流れている BGM は海外カンファレンスみたいなテクノ?な感じがいいなー誰か DJ のお知り合いいませんか」という流れで、じゃーやりますよって形で DJ を務めることになったりした。
会場も大きいし、司会もないし、より I/O に近いイメージになるなーと改めて考えながら、あれ、 I/O といえば、アレが欲しいぞと思い始める。
オープニングビデオが欲しい
満席の参加者でざわつく基調講演開演前。フッと会場の照明が落ちて、真っ暗な中オープニングビデオが流れ出す!ビデオが終わり、ステージに照明が当たりスピーカーが登場。 Good morning!
おお、いいじゃん!やりたい!と勝手に妄想を膨らます。
その後のスタッフミーティングで話してみたところ、それなりにウケはよかったので実際考えてみようということに。
でもそのためにはビデオの用意をしないといけない。ひとまず、身近な某ビデオ制作系クラウドソーシングの偉い人に相談してみたところ、「やフツー納期45日とかが平均やし2週間とかマジ特急もいいところやでJK」と社会常識を教わる。そうね、そうだよね…あんまり予算も割けないし、どうやら外に投げるのは難しそうということが分かった。
やっぱ無理かーと、諦め半ばIPA未踏スーパークリエータであるところの @kyoro353 ならなんとかしてくれるはず!スーパークリエータだし!と相談してみたところ、おもむろにMacBook Proを開き以前見せてもらったことがある動画を開いて見せ、「これ、 Keynote でできるやで」と言ってきた。マジか。 Keynote 最高か。なんかできそうな気がしてきたぞ。やるか。
というわけでビデオを作るというタスクが発生。自分で自分の仕事を増やす攻めの姿勢。それでもやりたくなっちゃったんだから仕方ない。
事前の用意
ビデオはなんとなく作れるんじゃないかという気持ちになりつつ、他の諸々の用意を考える。
入場中の BGM は今回自分は DJ できないので先に録る、画面に出しとく案内を考える、当日の映像や照明の切り替えを一覧できる進行表を作っておく、進行時に登壇者を紹介するスライドを用意しておく、会場の諸注意の台本用意する、などなどを issue 切ったりしつつ 10 日前あたりから準備。基調講演のタイムキーパーも要るなーと @tarotaro4 さんにお願いしたりもした。
ビデオの素材としてスタッフの画がどうせ欲しくなる気がしていたので、開催 5 日前にあったノベルティを袋詰めしたりネックストラップを準備する作業の会場に三脚とカメラを構えて登場。
ついでに PCDJ コントローラも持ち込み、作業用 BGM を提供すると見せかけて入場中 BGM 用 Mix を録ったりした。お邪魔しました。
リハ
ついに開催前日。音量や出力の確認のためビデオも一旦完成させたり、作り切れてなかった進行表を作ったりして、結局1時間半しか寝てなかった。夏休みの宿題か。
朝10時から講堂を借りてリハの予定だったが、鍵の受け取りの依頼を忘れており慌てて電話連絡して対応いただくことに。
講堂に到着して設備の電源を入れ、改めて機材を接続したところ早速問題発生。登壇者用に使う予定だった VGA 入力に Mac からの映像が出力されない。前回 Windows PC で問題なく出力され、念のために持ち込んでいた短めの VGA ケーブルだと Mac でも映るので、会場に用意されている 10m の VGA ケーブルに Mac の出力が不足している模様。
いろんな要素を考えた結果、接続を全部 HDMI に統一して、ケーブルと延長器と切換器と変換コネクタを持ち込み DVI 入力に突っ込むという運用に変更。確認したところ基調講演会場の登壇者が全員 HDMI 出力のある Mac/PC を使っていたし、むしろ画質面でも好都合だった。
ケーブル問題以外はおおむね順調に進んだ。借りたワイヤレスマイクやPCの音量も調整し、ミキサーのフェーダーの位置をカメラで撮影してメモっておく。ワイヤレスマイクレシーバの音量は最初からマーキングされていたのだけど、その位置で使うとミキサーへの入力時点でピーク叩いてしまって音が割れちゃう感じだった。謎。あとは画面にオープニングビデオを流しながら、あーここ背景色明るすぎて白文字読めないな、とか見た目の確認をした。
そんなこんなで、流れも確認して、必要な物品も購入して、残りは当日を待つのみ!今日は早く寝るぞ!あ、ビデオ修正しないと…となんだかんだ1時ぐらいに就寝。
当日
当日は朝8時に集合!というわけで6:30から起き出して諸々準備。慣れない乗り換えに若干迷いつつ会場には7:50頃到着。早めに入った人たちが居て、もう会場の電源や暖房は入ってる状態でスムーズに準備が始められた。
(HDMI 5m + 延長器 + 1m) → (HDMI切換器 + HDMI/DVI変換コネクタ) → (DVI 2m) というちょっと不安な接続だったものの、特に延長器の電源が必要になることなく無事接続できた。
リハ通りに諸々のセッティングを行い、登壇者とのブリーフィングを済ませ、開場30分前にあらためて PC の接続と流れを確認。緊張感が出てくる。
やんごとなき事情で、サポートをお願いしていた @tarotaro4 さんが来れなくなってしまったものの、なんとか一人でも操作できる見込みがたったのでそのまま進行することに。
そして開場。BGMを流す。スクリーンには @pside さん謹製の案内スライド兼ビジュアライザーが映る。徐々に人が入ってきて着席していく。登壇者控え室では発表前の @wasabeef_jp さんと @mhidaka さんが資料の最終チェックをしている。
途中、基調講演会場内の飲食禁止と、Wi-Fiがない旨の説明が必要となり、 @mhidaka さんにそれぞれ開始前と最初の挨拶内の案内をお願いした。
9:45頃、開始5分前なのに席が埋まりきっていない。どうやら電車遅延があり入場が押してしまったようで、まだ受付に列がある状態らしい。10時スタートにしましょうと連絡があり、全体を10分後ろ倒しに。BGMの長さが足りないため仕方なく2週目突入。
そして10時。 BGM をフェードアウトさせ、会場の照明を全部落とす。オープニングの再生開始。ひとつひとつ進行表に書いておいた通りにやっていく。登壇しているわけではないけど、どの操作も全員に影響するのですごく緊張する。映像を見ている人はどんな反応をしているのか見たいけど、ここからは見えない。
映像が終わったら、壇上だけ照明を上げる。 @mhidaka さん登場。拍手喝采。登壇者名表示が終わった段階で、登壇者PCへ入力を切り換える。
挨拶を終えると引き続き @wasabeef_jp さんの登場。画面を切り替えて登壇者名を出し、終わったら再び登壇者PCへ入力を戻す。
そんな流れで無事、基調講演が始まった。舞台の裏にいると、袖まで近づかないと発表内容が聞こえてこないので残念ながら内容はほとんど見れなかった。
基調講演が終わり、最後の仕事は会場諸注意の案内。壇上に出て、ネックストラップは着用してね、ランチはここで配られるよ、会場出てセッション会場への移動は外に誘導スタッフがいるよ、といった案内をする。 Keynote Remote で操作して切り換えてたら途中でが接続が切れてしまって困った。舞台袖で @mhidaka さんが手動で切り換えてくれてなんとか事なきを得た。
基調講演全プログラムが終了し、 DroidKaigi 2016 が始まった。
翌日必要なものを残し会場を一通り片付け、撤収。うおー、やり遂げたぞ。思いのほか緊張したぞ。 Twitter でエゴサしてみると、 BGM もオープニングも概ね好評だった模様。よかった!
Love the visualization in the #DroidKaigi intro pic.twitter.com/0hiHI55X1W
— Chiu-Ki Chan (@chiuki) February 18, 2016
会場のBGMでひたすらテンションが上がっている #droidkaigi
— クソメガネくん@どくぴー (@e10dokup) February 18, 2016
オープニングかっこいいぞw #DroidKaigi
— furusin (@furusin_oriver) February 18, 2016
その後は写真撮影 & Twitter 係として記録・広報・SPAM通報活動の @keithyokoma 御大のサポートに従事。
DroidKaigi はいいぞ #DroidKaigi
— DroidKaigi(Official) (@DroidKaigi) February 18, 2016
2日目
1日目で慣れたのでもう大丈夫だろー、と思いつつ2回目が一番失敗しやすいことをこれまでの人生でよく知っているので、改めて進行表を用意して挑む。
朝も8時前には講堂に着き、今日は @tarotaro4 さんも居たので、照明と基調講演のタイムキーパーをお願いする。 @tarotaro4 さんは、その場で紙に自分のやることを時系列で書き始めて抜け漏れがないようにしてたのですごくできる人。
HDMI切換器の都合上、切り替え時に接続が切れてしまうことが昨日の時点で分かったため、今日は登壇者の荒木さんにもそれを事前にお伝えして実際に試してもらい、できるだけスムーズに表示を開始できるように調整をお願いした。1日でPDCAを回していくスタイル。
今日壇上に上がるのは @mhidaka さん、首藤先生、 @konifar さん、荒木さんの合計 4 人。しかし映像記録で使うピンマイクが 3 台しかなく、最初に挨拶した首藤先生が退場したそばですぐにマイクを受け取り、基調講演の荒木さんに渡しに走るという運用。なんか AD っぽいぞ。
昨日と違い今日はオープニングがないため、最初からステージ上の照明は落とさずに登壇者表示 + 短いBGMで @mhidaka さんに入場してもらう形に。それ以外は昨日と変わらない流れで、大きな問題もなく、全体としてスムーズに進行した気がする。
ちょっと余裕があったので豆知識をツイートしたり、
基調講演開始までの間会場で流れているBGMはぜんぶ曲名に「Android」が入ってます #DroidKaigi #豆知識
— DroidKaigi(Official) (@DroidKaigi) February 19, 2016
ステージ周辺で記録用の写真を撮ったりした。
基調講演終了後は会場撤収し、全部原状回復させたあと撤収。 DroidKaigi における自分のメインの役目はこれにて終了。その後は後でYouTubeにアップロードする予定の講演ビデオの頭につけるタイトル映像を自動生成する仕組みを作ったりしていた。44本、やろうと思えば手動で作れるけど、修正が発生すると詰むんだよね…と思いながら AppleScript に詳しい方いませんかってスタッフ部屋でつぶやいたら、それ Automator でできるよ!って言われてやることが一気に減った。集合知の力すごい。
感想
基調講演の責任者にアサインされ、ディレクターとして活動するのかと思いきや、図らずもDJをやり、オープニングビデオを作り、会場の映像と音声と照明の演出を考えるマルチメディア対応型おじさんとして活動することとなり、すごい大変だったけど割と自分ができることを活かすことができ、また新しい発見が多く楽しかった。
DroidKaigi はボランディアの集まりでできていて、集まる人がエンジニアなので割と方向性が近い人たちの集合なんだけど、それでもそれぞれ得意分野があって、基本やりたいIssueを自ら取っていく+手がついてないものを定期的に棚卸ししてアサインしていく、という運用で自然とそれぞれの得意分野を活かせる比較優位な動き方ができてるのがとてもよいと思う。
前日のレセプションパーティと最後のアフターパーティではいろんな方が集まり、特に海外のエンジニアと話す機会が持てるイベントになったというのはちょっと感慨深い。
これまでに得た知見を共有するための場所だったり、知らないことを知るために行く場所だったり、QiitaやTwitterで見た人が実在することを確認する場所だったり、人によって参加する目的は様々だと思うけど、そういう場が日本国内に限らず世界からも求められている(主に日本に行く口実が欲しい勢から)というのは個人的には新しい発見だった。
@queencodemonkey @DroidKaigi awesome, Next year I will submit a talk!
— Israel Ferrer (@rallat) February 18, 2016
@rallat @queencodemonkey @DroidKaigi Me too!
— Corey Leigh Latislaw (@corey_latislaw) February 18, 2016
まとめとしては、アフターパーティの寿司が最高にうまかったです。
DroidKaigiとにかく🍣が最高だったしいろんな実績が解除できてよかった
— Yuki Fujisaki / tnj (@tnj) February 19, 2016
おまけ
オープニングビデオはこんな感じでした。
長くなったので、ビデオの制作やBGMについては別エントリで書くよ!
(追記) 基調講演のビデオが公開されました
真っ暗なところだとこんな感じで映ってたのかー