# ======================================================================== # [ONE-SS] みさき先輩"Fin."からエピローグまで # ------------------------------------------------------------------------ # # 前のがなんかヤナカンジだったので、全部書き直し〜(死 # 例によって倫理の授業中に書いてます。(ぉ # しっかしまぁ、理系の人間がこんなコトしてるようじゃ世も末ですね(何故 # オレって文系行った方がいいんじゃないの?(ダメぢゃん # また変なとこで終わってますが、続きは思案中です…てーか時間がない(ぉ # ONEのみさき先輩のシナリオをクリアしてない人は読んじゃダメっ、ね。 # # 2000-01-28 〜 2000-01-30 _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ # # 01/28: とりあえず学校で書いたのを打ち込む。変なところで終わってる。 # 01/30: ちょっと書き加える。実際に目が見えないでいないと分からないことが # あって苦戦するが何とか想像で書き足す。また変なところで終わる。 #     何か急に先輩が明るくなってきてる気がするけど気のせいでしょう(何 # # ======================================================================== 「冗談…だよね…?」 さっきから薄々とは気付いていた。 「…冗談…じゃないと……私…っ…」 そこには誰もいない… いないんだ。 「…浩平君……どう…して……」 私は明らかに動揺していた。 そんなはずないんだって、思いたかった。 「そんな……だって…嫌…だよっ…」 そんな現実、認めたくなかった。 そんなの、嫌だった。 急に自分の周りが何も分からなくなる。 真っ暗なスクリーンが、更に暗くなったような…そんな気分。 怖くて、その場に立っていることすらできなかった。 私は浩平君が座ってたはずのベンチに近づいて… …そして、現実に引き戻される。 「…どうして…居ない……の…?」 暖かい春の日差し。 桜の花の香り。 穏やかな風。 …乾かない、涙の跡。 私は泣いてたんだ。 たった一人で、公園のベンチに座って。 いなくなってしまった、大切な人を捜すこともできずに。 どうしようもない悲しさと、困惑に包まれて…。 予感ってのはこんなに当たるものなのか…。 …浩平君が、どこかに行ってしまう… 少し前から、そんな予感がしてた。 それに…最近の浩平君は、どこかおかしかった…。 ベンチに座った私は、そんなことを考えていた。 …あれからどのくらい経ったのだろう。 気持ちの動揺も、さっきよりは落ち着いていた。 溶けたアイスクリームが時間の経過を教える。 でも、今の私にそんなことはどうでもよかった。 (…本当は、浩平君と食べてたはずなのにね…) きっと、浩平君だって一緒に食べたかったんだよね…。 (どうしていなくなっちゃったんだろう…浩平君…) 思い当たることなんて何もなかった。 …いや、頭の中が真っ白で何も考えられなかったんだ。 そんな真っ白な頭の中に、ふと浮かんだ想い。 (…最近の浩平君…どこかおかしかったよね) いつも明るかった浩平君。 放課後に屋上で会ったときも、廊下でぶつかったときも、 明るい声で私の名前を呼んでくれてた。 …でも…あれはいつだったかな。 2月の、初めの頃。 「…もし、オレが先輩のこと忘れたらどうする?」 あの後から、浩平君は何かに焦っていた。 何でもないようなふりをしてたけど…。 だけど、だんだんその焦りは消えていった。 だから、もう大丈夫なのかなって思ってた。 (…そうじゃなかったのかな…。) 私は、そのことが今浩平君が居なくなったのと関係してるんだと、無心にそう思った。 だって…それしか、他に理由なんてないはずだから。 浩平君は、私を一人置いてどこかに行っちゃうような人じゃないもんね。 …そうでも思わないと、胸が押しつぶされそうだった。 公園の風が吹いている。 だんだん風が冷たくなっていくのが分かった。 そして… 鼻に香る匂いが、一瞬ふと強くなった気がした。 自分の前に、人が立っている。 「…みさき…?」 よく知った声だった。 「…もしかして、泣いてるの?」 困ったような声。 「……う…うん。もう…泣きや…っ…んだよ…」 明らかに泣いていたように、声が詰まる。 私はそれを知られるのが辛かった。 「……」 「…どうしたの…こんなところで?」 「……」 言おうにも、言葉が見あたらない。 「…雪ちゃん…こそ、どうしたの…?」 「…私は、まだ部の準備で…駆け回ってるんだけど」 「……そう…なんだ…」 暫しの沈黙。 話せるようなことが見つからないんだ。 「…みさき…良かったら一緒に帰らない?」 ふと、思いついたようにそんなことを言われる。 …正直、私は帰る方法なんか考えてもいなかった。 帰りも、浩平君と一緒だと思ってたから…。 今の私にはここから帰れる自信なんてなかった。 一人で居るのが怖かったんだ。 …だけど。 「……うん。…ごめんね」 私は雪ちゃんと一緒に帰る…そう、意を決した。 浩平君が教えてくれた、こんなに楽しい世界…。 今まで知ることさえのなかった世界。 たとえ浩平君が居なくても…きっと、歩けるよね。 「…どうして謝るのよ。どうせ、ついでなんだから」 雪ちゃんの声が、少しだけいつもの声に戻った気がした。 「ほら、待っててあげるから…早く涙拭いて」 「…うん」 涙を拭いても、気持ちはあんまり晴れてくれなかった。 今まで座っていたベンチを離れる。 雪ちゃんの手を握って、浩平君が居なくなった公園を離れる。 桜の花びらが舞っていた。 風に乗って、そこから居なくなる私たちまで届いていた。 日が暮れかける中、私達は商店街を一緒に歩いていた。 一歩一歩、踏みしめるように。 早くこの道を、一人で歩けるようになりたかった。 …浩平君が、いつか帰ってきてくれる前に…。 (私、待ってるからね…) 私がいくら泣いても、浩平君が来てくれるわけじゃないんだ。 (どうしていなくなったのかは分からないけど…) あんな場所で、急にどこかに行くような人じゃないから… (…浩平君…きっと帰ってきてくれるよね) 歩きながら、私は浩平君を待つ決心をしていた。 …涙の跡は、もう乾いていた。 「…みさきってさ」 今までの沈黙の壁を押し破るかのように、雪ちゃんが呟いた。 「こうやってさ、私と外歩くの…初めてだよね」 「そう…だね…」 そう、私は今まで親以外と一緒に外を歩いたことなんかなかった。 「初めてだね」 「どう? 私と歩いてる感想は」 「…うーん…」 大体、知らないところを歩くこと自体、初めてのようなものだ。 中学校までの道を、お母さんと一緒に歩いたとき以来のような気がする。 全てが、今までと違う世界。 住んでる場所は同じはずなのに、私には全然違うように感じられた。 その世界に慣れるまでが、一番大変だった。 …それは自分が今まで思っていたより大変だった。 今まで考えてもみなかったほどにいろんなことができなかったよね… 目が見えなくなって、初めて現実に怖いと思ったこと。 自分が「そこ」に立っている感じさえしなかった。 普段何も考えずに生活していた家の中でさえ、歩いて回ることができなかった。 一歩一歩、自分がどれだけ前に進んでるのか…距離がどのくらいあるのか…。 初めて家の中を一人で歩いたとき、周りの状況が分からないことがとっても怖かった。 どんなに目を開けても、どんなに凝視しても、私には何も見えなかった。 ずっと真っ暗な闇の中。 何もないわけじゃないのに、そこはずっと真っ暗で… 目をつぶっているときよりも、もっともっと暗くて…。 そこに私一人取り残されたような気がして…。 周りには誰もいなくて…。 お母さんの声が聞こえても、孤独な気持ちが抑えきれなくて…。 (…私は…) もうずっと…こんな暗い中を一人で生きていくのかな。 心の底から、そんなことを実感してた。 (こんな世界を…こんな真っ暗な世界を…私は生きていけるのかな) そこには、どこからともなく湧き出てくる不安しかなかった。 それはいつだっただろう。 真っ暗だった世界の中。 真っ暗だったはずなのに… しばらく私が見ていなかった風景。 家の中だった。 そこには、私が立っていた。 私は、周りのことを頭の中で具象化できるようになっていた。 …頼れるのは、残った四感。 それをめいっぱいに使って私は自分の中に地図を作った。 家の中を… 自分がこの前まで見ていた記憶に頼りながら… 見えない壁を手で伝いながら… おぼつかない足取りでずっと裸足で歩き回って… 一歩一歩、ゆっくりと… そして、それは完成した。 それが記憶と結びついて…懐かしい風景が見えた時。 初めて一人で家を歩けるようになった瞬間だった。 「…みさき?」 不意に自分の名前を呼ばれる。 「え…あ、ごめん…」 「大丈夫…?」 「…うん、ちょっと考え事してただけだよ」 …過去を見てただけだよ。 「それより…感想言ってなかったね」 正直な気持ち。 「…私は、雪ちゃんと歩けて嬉しいよ」